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 野町和嘉のサハラ特別写真展へ
サハラ、砂漠の画廊
タッシリ・ナジェール古代岩壁画
広大なサハラ砂漠の中央に位置する、リビアのフェザン地方。ここはかつて、大河がうねる緑の大地が広がり、あらゆる種類の野生動物にあふれていた。人々の暮らしもあった。およそ8000年にわたって描き続けられてきて各地にいまも残る岩絵は悠久の歴史を今に伝えている。過去の地球変動周期により、動物も人々の生活も変化していった。
1万年周期で大地は入れ替わっていった。気候変動と民族の歴史をたどることができる貴重な地域でもある。タッシリ・ナジェールは世界遺産にも登録されている貴重な文化遺産。ムルズク、ウ―バーリーという２つの巨大砂丘のまわりを、標高1500�蛋宛紊離織奪轡蝓Ε淵献А璽襪鬚呂犬瓩箸垢觧崖戞�高地が遠巻きに囲んでいる。
砂丘ははげしい降雨によって、大量の砂が低地に運ばれ、砂漠化し、風に吹かれる流砂となってぶつかり合い、摩耗し、極限の石英粒子となり堆積した。ムルズク砂漠は乾燥し切っており、雑草1本芽吹くことができない、乾ききった砂丘地帯となっている。
これらを半生かけて追い求めた野町和嘉さん(1946年、高知県生まれ)カメラマンがサハラの壁画を65点披露。この作品展が新宿・高野のコニカミノルタプラザで特別展示されていた。4月27日〜5月10日。1970年代から撮りためた写真と、撮り下ろした写真を合わせた集大成というべきもの。これが思いもかけず神秘的であり、興味深い内容だ。得も言われぬ感動で楽しませてくれた。
タッシリ古代壁画とはなんとも興味を引く響きである。多くの人は、その現場に居合わせるなんてできない。それが、富士フイルム・スクウェアでは3�叩�4�辰箸いΦ霏腑廛螢鵐箸播玄┐気譴燭海箸芭彎豐兇�一気に高まった。現地のスケール感がより身近に体感できる。
サハラはおよそ1万年を周期として、砂漠と湿潤を繰り返してきた。1万2000年前は「緑のサハラ」だった。湿潤な気候と共にこの地に移り住んだ人類の祖先は、堅い岩に人々の営みや野生動物の絵を彫り込んだのだ。
絵具は、大地に露出している頁岩や木炭などを牛乳で溶かしたものなどが主で、一度描くと、吸収性の良い砂岩の岩面に深く浸透して、何千年という時間を持ちこたえてきた。8000年にもわたって描き続けられてきたのは、タッシリ・ナジェールだけと言われている。
タッシリ・ナジェールは民族の言葉で「川のある台地」の意味。数千年前までは水をたたえていた。深い川が流れていた。涸れ河、ワディが何本も走っているのが、その名残りと言える。岩絵のなかに大きな舟もあるのは大河が流れていた証明だ。泳ぐ人、ワニ、カバも描かれている。陸の生き物では牛、馬、ラクダ、ゾウ、キリン、サイ、ヤマネコ、ガゼルと生物多様性の世界があった。
しかもその岩絵の迫真力といったら驚きしかない。名もなき芸術家たちの驚くべき観察眼と表現力に脱帽する。天才というのはどんな時代にも存在しているのだ。
( 2010/05/15 )
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