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 「インカ・マヤ・アステカ」展 「謎の文明」ではない
中南米で興った３つの文明、インカ、アステカ、マヤ。多くの謎や伝説に満ちているといわれる。これらの三つの文明が遺した貴重な発掘品219点、そのほとんどが日本初公開だ。「謎の文明」「失われた文明」の３つを一度に体験できることはうれしいことだ。（上野の国立科学博物館で24日まで、神戸、岡山、福岡でも順次開催）
メソアメリカ文明はマヤとアステカに分けられる。マヤ文明は紀元前４世紀から２０００年もの長い間、ユカタン半島中央部の熱帯雨林の中で成熟し、ピラミッドを建てるなど高い技術を持っていた。絵を組み合わせたような独特の文字を持っていた。絵は言葉でもあったことになる。
王の墓から出てきた王様のマスクはたくさんの翡翠石を使って出来ている。高地に誕生したカミナリフユ、密林にそびえるピラミッドの王朝・ティカルなど２０地域に広がって、しかも長く続いた文明の総称。すべてが密林に栄えたわけではない。
アステカ文明は、14〜16世紀、メキシコ中央高原のいろいろな文明をまとめ、湖の中にあった首都・テノチティトラン（現メキシコ市）を建てた。20万人以上の人々が住んでいたと言われている。今回、「湖上に浮かぶ都市」として紹介されているものである。アステカの人々は、太陽や月、大地、火など森羅万象の神様がいて世界を動かしていると信じていた。
アンデス文明もまた紀元前３５００年から16世紀まで膨大な時を持つ。海岸地から高地まで34ほどの地域国家に分かれる。この中には、地上絵で名高いナスカやシカン文明も含まれる。これらを統一したのがインカである。が、意外にもその統治期間は短い。わずか56年である。
インカの人々も文字を持たなかった。ただし、情報の伝達と記録手段をもって大国家を築いた。広大な領土を治めるシステムが道路網の整備だった。クスコを中心に総延長３万８６００�劼箸いΔ�らすごい。
インカ道（カパック・ニャン＝王道）は現在のエクアドル、ペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチンの５ヵ国に広がっている。宿駅（タンポ）や継飛脚（チャスキ）という制度も整えられていた。今回の売り文句である天空の都「マチュピチュ」もインカ道と結ばれていた。
アステカ王国の兵士は数万人、それがわずか５００人のスペイン軍に制服された。インカ帝国もフランシスコ・ピサロが１５３２年、インカ最後の王アタワルパを倒し征服し植民地とした。
新大陸は世界史の舞台に登場するとすぐに征服され、消し去られていった。なぜアメリカ先住民の方が逆に旧大陸を征服できなかったのか、これこそ人類史の謎である。
アメリカ大陸文明は共通の世界観を持っていた。世界全体を支配していたのは、極めて単純な関係にあった。「神々（自然）に奉仕することで、その恩恵を享受するという生活が日々繰り返されていたのである」。旧大陸勢力に征服されたことは歴史的事実ではあるが、人々の生活には少しも謎はない。われわれ日本人の末裔とも言えるモンゴロイドの人も同じ価値観をもっていた。誇っていい文明であったといえる。
( 2007/09/01 )
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