初イベント

「緑や自然っていいなぁと思います」「モノは無駄にしません」と淡々と環境生活を語る。
 自然保護運動家や園芸愛好家の人たちが熱っぽく語るのとは違った印象を受ける。
「うちはあれしてる?これしてる?」「ゴミはちゃんと分別した?」など、子どもが学校で教わってきたことに熱心なのだという。
 板橋区は、人と環境が共生する都市「エコポリス板橋」の実現をめざし、環境学習などの拠点となる「エコポリスセンター」を平成7年に開設した。環境や省資源・リサイクルについての情報を発信しており、小中学校での環境教育も活発だ。
 二人のお子さんが通う板橋区立第七小学校でも、クーラーはなく、あるのは緑のカーテン。昨年の夏は、車のクーラーが壊れたが、使わなくても大丈夫でしょと、子どもたち。

□■■

 「校舎の壁の緑はとても目立ち、通りすがりの人も“あれっ”といった表情で、振り返ったりしていました。昨年に続いて2年目でしたが、今年の方が良く茂っていました。だから、余計により多くの人に知ってもらえたらと、提言賞に応募しました」。
 紹介された「緑のカーテン」のベースはマップ式緑のカーテンで、高さ7m、408平方メートル。平成15年、板橋区に本社を置くマンション建設・販売等を行う(株)リブランが寄贈。今年は6年生が総合学習の時間に土づくりから取り組んだという。
 緑のカーテンは、古くて新しい技術。朝顔、昼顔といった夏の涼味を得る風物だ。五感で感じる涼しさはエアコンでは得られない。今では贅沢なものにすら感じられる。「うちでもやってみよう」と、近所に住む人の声もあり、学校の緑のカーテンは、街全体に広がる予感さえある。
 今春は、緑の肺ともいえる「バイオ・ラング」が愛知万博の目玉として登場する。緑のカーテンと同じ壁面緑化だ。一般に広く普及した屋上緑化は近年急速に広まったが、壁面緑化はより多彩な応用が可能。その情報発信として、万博はもとより、学校が果たす役割は大きい。
■□■

 明美さんも作品の中で、「緑多き町並みによって、環境を大事にする精神が根付いていくはずだ」とキッパリ。この確信はどこから来るのだろう。
 明美さんは、東京・文京区に生まれ育った。大学で英語を学び、その後、英語学校に就職。結婚した後は、近所の園児に英語を教えて欲しいと頼まれたのがきっかけで、自宅に私塾を開設。教え子たちも高校生となり、大学受験の対策も行うまでに、すっかり地域に根を張って生活している。
 家業は板橋で90年続く木工所を営む。自宅件木工所は、敷地に抱えきれないほどのサクラの大木もある恵まれた環境。同居するご両親が30年前の建て替えの際に、秩父から持ってきた苗が成長したものだ。
 今年は柿の木も実をつけた。食べた柿の種を子どもたちが蒔いたもので、おばあちゃんが陰ながら見守ってきた柿だ。明美さんの実家にもかつて柿の木があった。「何かホッとする懐かしさがあり、少々渋かったのですが家族で食べました」と微笑む。
 傍らの夫・進さんも「海や山、近くの小石川植物園や城北中央公園にも家族でよく行きます。中央公園は最近芝生広場が広くなって、芝生をごろごろしたり、贅沢な気分を楽しんでいます」という。
 二人の子どもたちは、そんなお父さんの影響もあり、自然が大好きだ。
■■□

 もう一つ好きなのが作文。小学3年の豪君は、朝日小学生新聞で昨年大賞、6年生の葵さんは地球に優しい活動報告で昨年末内閣総理大臣賞受賞。相次ぐ受賞で喜びいっぱいの小林さんのご一家だ。
 明美さんは読書好き。子どもたちが小さい頃から、本を読み聞かせ、今でもたまにせがまれるという。家族の作文好きは、お母さんの影響といえそう。
 緑や環境について、自然で淡々としているように感じたのは、日常生活に溶け込んでいるからで、緑多き町並みの確信も、温かな家庭があり、地域に根を張った暮らしぶりに起因しているのではないだろうか。

第11回(2004年)のみどり提言賞は、「この街のここが好き」「私の花のある生活」「こんなエコ製品がほしい」をテーマに、募集期間中372編のご応募がありました。