広い平地で、たくさんの緑に囲まれて、芝生の上に寝転がり、花壇や噴水を眺めながら散策する。そこにはトンボ、テントウムシといった昆虫から、両生類、鳥類、哺乳類といった、さまざまな生物が息づいている。僕らが公園のイメージに見る夢は、豊かな平和と安らぎの象徴なのかもしれませんね。でもそんな欧米スタイルの公園に、僕はちょっぴり不満があります。

 おだやかな四季に恵まれ、自然が豊かで人に優しかった日本では、欧米のように人工的な公園をつくらなくても、自然に親しめる場所はたくさんありました。子どもたちの安全な遊び場所としても、お寺や寺院の境内があり、少し冒険したい年齢には、裏山や鎮守の森が控えていました。ところが現代では、大都市に限らず身近な自然は少なくなって、公園がその役割を担っています。

 人は誰でも緑の自然空間がないと休まらない。だからどんな町づくりにも公園は欠かせないのですが、つくられた公園の利用実態を見ていると、あまり有効に使われているとは思われない。僕はその理由を、公園が欧米的な人工物になりすぎて、日本人の感覚にはよそよそしくなったからではないかと思うのです。日本の公園は、もっと日本的であってもいいのではないでしょうか。それは単に日本様式を取り入れた欧米的な公園をつくるのではなく、付き合い方から日本的な、自然との一体感を味わう場所をつくるということです。

 豊かな営みを持つ自然の中で時を過ごし、そこで受け取った見えないものが、やがて長い時間をかけて人の心を育てていく。日本文化を育んだ雑木林や裏山が、やがて日本的な公園として生まれ変わって、ありのままの自然が大切にされていってほしい。少なくとも僕が公園に託してみる夢は、たとえば古い鎮守の森のように、なが〜い時の流れを優しく見つめる、悠久の自然を身近に感じさせてくれるものであってほしいと思うのです。


第9回(2002年)のみどり提言賞は、「公園の夢」「樹(花)の夢」「墓苑の夢」をテーマに、募集期間 01/06/01〜02/03/31・900通のご応募がありました。
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