都市における環境緑化について考える。都市といえども不充分ながら、人工的な森が存在する。公共施設、公園、道路、企業や家庭等の様々な緑地帯が散在する。それらは残された自然と融合して、点と線の都市の森を形成している。

 都市の森という視点に立脚すれば、都市型の人工的な自然の姿が浮かび上がる。人工の森の中で人間を含めた多様な生物が共存している。都市における環境緑化は、新しい形の人工の森を創造するという課題である。それは都市に残された自然を、いかに有機的に結合させ拡大するかという課題でもある。

 都市における環境緑化計画において、まず行うべきことは緑の実態調査という事である。都市の森の植生を調査する。つまり都市の森の「緑の地図」を作成するのである。これは研究機関の指導の下、全国の都市で行われる大規模な調査である。調査には市民ボランティアの協力が不可欠であろう。更に調査は都市の森に生息する動物、昆虫等の生態調査へ発展していくであろう。

 こうした調査活動によって、都市の森というフィールドの、緑の環境が初めて総合的に把握されることになるだろう。都市の森の実態を調べれば、身近にある自然への関心が高まり、都市の中の緑を再評価する気運が生じていくだろう。環境緑化の第1歩はまさに、身のまわりの自然に目を向けることである。

 都市の森の創造は、自治体、団体、企業、家庭等各々が統合された形の都市緑化である。それぞれが分散した点と線の緑化でなく、都市全体を1つの森として考える面の広がりを持った新しい構想である。それはいわば、森の中の都市を創造する試みである。「緑の地図」作成によって、都市の中の貴重な自然を全体的に把握し、都市の森も1つの生態系という視点に立ち、その生態系の維持、管理、更に新たに創出していくことが可能になるのである。


第1回(1994年)のみどり提言賞は、「年環境緑化に関する私の提言」「こんな公園が欲しい」をテーマに、募集期間6カ月・1,600通のご応募がありました。
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